自分を殺した犯人を突き止め、自らの手で殺せば生き返る
「自分を殺した犯人を突き止め、罪を告白させて殺せば生き返る」
そんな強烈な言葉を告げられるところから幕を開けるアドベンチャーゲーム『終天教団』。滅亡を望む狂気の宗教国家を舞台に、記憶を失った元教祖が「4日間の仮の命」を与えられ、自分を殺害した5人の幹部を疑い、追及していくサスペンスミステリーです。
本作最大の特徴は、疑う幹部によって「ステルスアクション」「本格推理」「ザッピングノベル」「恋愛ADV」「デスゲーム脱出」と、ゲームジャンルそのものが丸ごと変化するという尖りすぎたシステム設計にあります。
正直なところ、システム面の粗さや遊びやすさの面で手放しには褒められない部分もあり、誰にでも手放しでおすすめできる優等生な作品とは言えません。しかし、終末思想が漂う狂気的な世界観の構築と、点と点がつながっていくストーリーの魅力は圧倒的です。
今回は、強烈な個性と癖を抱えた野心作『終天教団』のプレイフィールを、良かった点・惜しかった点の両面から率直にレビューしていきます。

『終天教団』の基本情報
ジャンル:アドベンチャー(アクション有り)
対応プラットフォーム:Switch、PC(Steam/DMM GAME PLAYER)
Steam価格: ¥6,980(税込) セール時 ¥3,333(税込)等
プレイ時間:(初回クリア想定)約30時間(筆者実測)
難易度:★☆☆☆☆ 推理・アクションともに難度は低め。ゲーム側の誘導も多く、詰まる場面はほとんどありません。
『終天教団』の特徴、魅力
『終天教団』の最大の見どころは、「5人の幹部をめぐる5つのルートを自由に選び、それぞれで全く異なるジャンルのゲームを楽しめる」というユニークな構成にあります。
タイムリミットが迫る中、容疑者である5人の教団幹部のうち誰から調査を始めるかはプレイヤー次第。どの順番で攻略しても問題ありません。そして驚かされるのが、選んだ相手によってプレイ体験が根底からガラリと変わる点です。

事件現場を調べて証言を集める王道の「推理アドベンチャー」が始まったかと思えば、別のルートでは迫りくる怪人から身を隠す「ステルスアクション」、果ては毒の解毒剤を求めて少女たちと心を通わせる「恋愛アドベンチャー」や、命懸けのパズルを解く「脱出ゲーム」まで、実に多彩なカテゴリが詰め込まれています。
ルートを切り替えるたびに画面構成も操作感も一変し、まるで短編集のように一味違ったシステムを楽しめるのが、本作の大きな個性となっています。
総合評価
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| ストーリー | ★★★★★ |
| キャラクター | ★★★★★ |
| 推理要素・ゲーム性 | ★★★☆☆ |
| 遊びやすさ | ★★★☆☆ |
| コストパフォーマンス | ★★★☆☆ |
| おすすめ度 | ★★★★☆ |
ストーリー: 新興宗教や「神の力」といった超常的な能力が絡む非常に独特な世界観でありながら、散りばめられた数々の伏線がしっかりと回収されていく構成は見事でした。先の読めない展開で物語への満足度が非常に高く「5」としました。
キャラクター: 主人公の下辺零や5人の幹部はもちろん、謎の存在である天使や、それぞれのルートで登場するキャラクターに至るまで、全員が一筋縄ではいかない強烈な個性と独特な魅力を持っていました。物語を引っ張る存在として文句なしの「5」です。
推理要素・ゲーム性: ストーリーの真相や謎を解き明かしていく過程は面白かったのですが、各ルートに用意されたゲーム要素に関しては出来に差があり、正直あまり面白いとは言えないものやおまけ程度にしか感じられない部分もありました。純粋なゲーム部分のクオリティを考慮して「3」にしました。
遊びやすさ: 基本は一本道で進めやすいものの、ところどころテンポの悪さを感じる場面がありました。さらに終盤でセーブができないなど、システム面でやや不自由に感じられる仕様が見受けられたため「3」としました。
コストパフォーマンス: クリアまでのプレイ時間は30時間強としっかり遊べたものの、インディーゲームとしては6,980円とかなり強気な価格設定です。内容に対してやや割高に感じてしまう面もあり、その点を考慮して「3」としました。
おすすめ度: 一部のルートのゲーム性がおまけ程度で完成度が高いとは言えず、遊びやすさにも課題はあるものの、それを補って余りある独特な世界観と、きれいに伏線を回収してくれるストーリーは非常によくできていて楽しめました。総合的な満足度を踏まえて「4」としました。
⚠️ここから先は『終天教団』の攻略やエンディング・真相に関する重大なネタバレが含まれます!未プレイの方は絶対にブラウザバックしてください!⚠️
【ネタバレ有】『終天教団』5つのルート攻略・感想
実際に私が攻略した順番に沿って、各ルートのゲームシステムと、物語の核心に迫るストーリー展開について振り返っていきます。
1. 法務省ルート:犬神軋

【ジャンル:推理アドベンチャー】
最初にプレイしたのが、法務省を司る犬神軋のルートでした。
ゲーム内容は現場で情報を集め、ピースを埋めるように真相を暴いていくパズル的な推理アドベンチャーです。一部「その推理は少し強引では?」と納得しづらい箇所もありましたが、全体としては推理ゲームとして手堅くまとまっていました。

シナリオ面では、人々を異教徒に変えてしまうウイルスの存在が明らかになります。調査を進める中で見えてくる犬神の人柄は決して悪人には見えず、むしろ主人公の側にいるはずの「天使」の存在を察知しているような鋭さも見せていました。しかし真相に迫りかけた矢先、異教徒の容赦ない襲撃に遭い、関係者全員が殺害されてしまうという衝撃の結末で幕を閉じます。

2. 警備省ルート:伏蝶まんじ

【ジャンル:ステルスアクションホラー】
2番目に選んだのは、怪人ネフィリムの影が迫る警備省ルートです。
見下ろし視点のマップで敵の視界や追撃を避けながら進むステルスアクションですが、ホラーとしての怖さやアクションとしての手応えはやや控えめで、ゲームとしては少々物足りなさを感じてしまいました。

一方で、まんじというキャラクターの描写は印象的でした。教祖に青い花を贈るなど、随所に深い敬愛の情が垣間見え、とても教祖を殺害した犯人とは思えません。しかし、最後はまんじが主人公の乗る車を交通事故に巻き込むような形で死亡するという、後味の悪いショッキングな幕切れを迎えました。

3. 保健省ルート:丑寅幽玄

【ジャンル:極限脱出アドベンチャー(デスゲーム)】
3番目は、突然デスゲームに巻き込まれる保健省ルート。物語の真相に大きく近づく、極めて重要なルートでした。
パズルを解いて密室から生き延びる脱出ゲーム形式で、VTuberの生配信を模した演出でゲームが進行していく見せ方が秀逸で、純粋にストーリーへ引き込まれました。このデスゲームを仕掛けた黒幕は幽玄自身であり、病気に冒された実の妹を救うため、「神の力」を持つ適格者をあぶり出す目的で引き起こした凶行であることが判明します。

妹への狂気的な執着と、普段見せていた熱血な性格がすべて演技(偽物)だったという二面性、そして教祖への信仰心の薄さを考えると、「こいつこそが犯人でも全くおかしくない」と強く感じさせられました。さらに、教祖を含めた自分たちが実はドロイド(機械)であったという驚愕の事実も明かされ、物語全体の根幹を揺るがす屈指の重要エピソードでした。

4. 科学省ルート:伊音テコ

【ジャンル:マルチ視点ザッピングノベル】
4番目に選んだ科学省ルートは、個人的に本作の中で一番面白く、最も気に入っているルートです。
複数人の視点を切り替えながらバッドエンド(死のルート)を回避し、生き残る道を探し出すマルチザッピング形式で進行します。序盤から教祖の命を狙っているかのような不穏な空気を漂わせており、「本当にこいつが殺害したのか?」と最後まで疑念が尽きません。

テコは目的のために人間をコマのように冷酷に扱う一面がありますが、その行動の根底には「より良い未来を導くため」という大義があり、単純な悪人ではないことが分かります。また、地上の動物たちが死滅しており、終天教団がドームに覆われた閉鎖空間であるという世界の真実も開示され、SFサスペンスとしてのシナリオの牽引力は群を抜いていました。

5. 文部省ルート:黒四館仄

【ジャンル:恋愛アドベンチャー(?)】
最後に攻略したのが、3人の美少女の中から本物の黒四館仄を見つけ出す文部省ルートです。
「恋愛ADV」と銘打たれてはいるものの、実態はヒロインたちを順番に攻略していくことで次第に彼女たちがヤンデレ化していく、サイコホラーに近い尖った構成でした。

発想自体は非常に面白くダークな魅力があったのですが、ゲーム面ではヤンデレ化したキャラクターの感情を鎮めるための選択肢が1つしか用意されておらず、事実上の作業プレイになってしまっていたのが惜しまれます。もう少しプレイヤー側の試行錯誤や選択の幅があれば、よりシステムとしての面白さが際立ったのではないかと感じました。
また、このルートではゲーム開始時から表示されていた「終焉カウンター」の意味も判明します。これは単なる終焉までの残り時間ではなく、「この世界に残されている人間の数」を示していました。

5つのルートの先にある「真実」と物語の結末
すべてのルートをクリアすると、主人公は「これまでの5つのルートですべての記憶を保持したまま、すべての出来事をこなした世界線」へと到達します。バラバラだったピースが集まり、ついに教祖殺害の真相と、この世界を覆う欺瞞の正体が暴かれることになります。
教祖を殺した犯人と、その真意

集まった証拠によって明かされた犯人の正体は、伏蝶まんじでした。
警備省ルートで見せた教祖への深い敬愛は決して嘘ではありませんでした。まんじが教祖の命を奪った本当の理由、それは「天使に乗っ取られた教祖から直接頼まれたから」というあまりにも切ないものでした。
教祖の肉体には、ドロイドすべてを初期化できる「エリミネートコード」が組み込まれていました。そのコードが天使の手に渡るのを防ぐため、教祖は自らの意思で、最も信頼するまんじに「自分を殺害してくれ」と託していたのです。まんじの行動は裏切りではなく、教祖との誓いを守るための苦渋の決断でした。
最も不気味だった存在「天使」の正体
そして、本作を通して最大のミスリードであり、常に不気味な気配を放っていた「天使」の正体。それは神の使いなどではなく、過去の人間たちが遺した「ハッキングAI」でした。

最初から言動に怪しさは漂っていたものの、その正体と目的が暴かれた瞬間、「あの不自然な制約や言葉は、すべてここに繋がっていたのか!」と、足りなかった最後のピースがカチリと音を立ててハマるような強烈なカタルシスを味わいました。
「犯人を特定して殺せば完全復活できる」という言葉は、主人公を誘導してエリミネートコードを奪取するための甘い罠であり、天使たちこそがこの狂気のシステムを監視・支配していた真の黒幕だったのです。
主人公が選んだ未来と物語の結末
物語の終盤、主人公は自らの命を投げ出してでもドロイドたちを救う道を選択します。
命を落としかけた主人公でしたが、丑寅幽玄の尽力によって奇跡的に一命を取り留めます。そして主人公は、かつて滅び去ったとされる世界で「まだどこかに生き残っているかもしれない人間を探す旅」へと出ることを決意します。

その旅の隣には、かつて教祖をその手で殺め、重い宿命を背負った伏蝶まんじの姿がありました。
夕日へ向かって荒野をバイクで駆け抜けていく二人の後ろ姿は、退廃的で狂気に満ちていた物語の締めくくりとしてあまりにも美しく、心に深く残る素晴らしいエンディングでした。荒削りなゲーム部分を補って余りある、見事な伏線回収と読後感を与えてくれる結末です。

まとめ
『終天教団』は、「自分を殺した犯人を突き止めて殺害する」という強烈なプロローグの掴みから、すべての伏線が綺麗に収束していくラストの結末に至るまで、シナリオの筋が一本しっかりと通っており、個人的にストーリー面は非常に好みの作品でした。
5つのルートでゲームジャンルが丸ごと変化するという試みは非常に野心的だった反面、ルートによってゲーム部分の出来にムラがあり、一部の要素がおまけ程度に感じられてしまったのは惜しいポイントです。操作性やテンポ感を含め、純粋なゲームプレイとしての快適性を求めると、どうしても人を選ぶ部分は否めません。
それでも、単なるカルト宗教サスペンスに留まらず、「滅びゆく世界で、ドロイドと人間がどう向き合い、共存や選択をしていくのか」という、これからの現実の未来でも起こり得るかもしれない普遍的かつ深遠なテーマの描き方は非常に興味深く、強く引き込まれるものがありました。
システム面での粗削りな部分を補って余りある、緻密な伏線回収と読後感の良さを備えた本作。尖った世界観や骨太なSFサスペンス、考察しがいのある群像劇をじっくり味わいたい方には、ぜひ一度触れてみてほしい一作です。
👇 個人的ににおすすめできるミステリーゲームをまとめた記事を書きました!ぜひ見てみてください!

ちなみに、まとめ記事の中でも直近で個人的に一番ヒットだったのが『魔法少女ノ魔女裁判』です!
Steamで「圧倒的に好評」を獲得した超濃厚なデスゲーム×ミステリーなので、絶望的な展開や考察が好きな方はぜひチェックしてみてください。
