奇抜な言葉に隠された「本音」を翻訳する、優しさに満ちた物語
奇抜な言葉に隠された「本音」を翻訳する、優しさに満ちた物語
『さとり中二病相談室 -第二現実の翻訳者-』の早期アクセス版を、現在配信されているチャプター4までプレイしたので、その感想と魅力をお届けします!
本作は、「中二病」と現代の人間関係をテーマにした共感型心理ミステリーADVです。プレイヤーは「さとり第二現実相談室」の室長となり、奇妙な悩みを抱える「中二病の来訪者」と向き合います。彼らが信じる「第二現実」の裏に隠された本当の気持ちや、中二病に至った経緯を解き明かしていくのが主な目的です。
プレイ時間はチャプター4までで約7時間。早期アクセス中のため、今後内容が変わる可能性もありますが、現時点でも十分に引き込まれる完成度でした。
なお、前半はネタバレなしで、後半ではチャプター4までの各エピソードをネタバレありで振り返ります。
👇同じ作者様の作品でおやおや?大家さん!レビューです。この作品にも登場するキャラクターが出てくるのでぜひ見てください!

『さとり中二病相談室 -第二現実の翻訳者-』の基本情報
ジャンル:アドベンチャー
対応プラットフォーム:PC(Steam)
Steam価格: ¥1,280(税込)
プレイ時間:早期アクセス 約7時間
難易度:★★☆☆☆ 難易度は低めですが、キーワードの抽象度が高く解釈に迷いやすい部分があります。
『さとり中二病相談室 -第二現実の翻訳者-』の特徴、魅力
奇抜な言葉の裏にある「本音」を読み解くゲームシステム
ゲームは主に以下の3つのメカニクスで進行します。
まずは情報を集める対話
話題を選び、現実離れした言葉の中から、次の対話に必要な話や翻訳に使うキーワードなどを拾っていくパート


相手の心の世界に飛び込む読心
来訪者だけが見ている「第二現実」に踏み込み、言葉にできない世界を掴みキーワードを引き出す。読心では隠された部分などもあり、対話で広げていく必要もある


キーワードを選び相手の思いを翻訳


集めた情報を組み合わせ、深層心理を推理して「真意」を導く。誤った選択を続けると状況が悪化してしまうため、相手を正しく理解し、慎重に言葉を選んでいく緊張感とやりがいがあります。
個性的なキャラクター
この作品のテーマが「中二病」ということもあり、キャラクターが非常に個性的です。心が優しいから病を患っている部分もあり、魅力的なキャラクターになっています。
砂取 小五郎(さとり こごろう)
中性的な見た目、丸メガネが似合うさとり中二病相談室の室長。中二病の患者に親身に寄り添い常に優しい言葉を選んでいるが、自分自身にも問題があった時期があったようなことが示唆されている。今後の患者とのやり取りでどのような過去があったのかが分かるのかなと期待しています。

梓 実琴(あずさ みこと)
小五郎の助手になるためにさとり中二病相談室に通う女の子。もともとは自分も中二病で、小五郎によって助けられているようです。天使の流れになると黙ってしまったりと、実は本当に天使だったり?という事もありえるのかもという気もしています。

天野 乙流(あまの おつる)
さとり中二病相談室の来訪者。「堕天使の転生者」でチュートリアル役。上から目線だがだんだんと心を開いていきます。

総合評価
| 項目 | 評価 |
|---|---|
| ストーリー | ★★★★★ |
| キャラクター | ★★★★★ |
| 推理要素 | ★★★☆☆ |
| 遊びやすさ | ★★★★☆ |
| コストパフォーマンス | ★★★★☆ |
| おすすめ度 | ★★★★★ |
ストーリー:「中二病」を病として扱うありそうでなかった設定が秀逸で、奇抜な世界観ながら物語にはしっかりとした芯が感じられました。チャプターが進むごとに主人公の背景や心情が明かされていく構成も引き込まれ、先が気になって仕方なくなる完成度だったため「5」としました。
キャラクター:中二病を患っている設定ゆえに登場人物の個性が非常に強烈で、どの人物も強く印象に残りました。単なる出オチに終わることなく、一人ひとりにスポットが当たって内面まで丁寧に掘り下げられていたため「5」としました。
推理要素:相手の言葉からキーワードを拾い上げて本心を探っていくシステム自体は、推理として独自性があり面白いと感じました。しかし、回答キーワードの抽象度が高く「こちらも正解なのでは?」と迷う場面が散見され、ややモヤモヤが残る設計だったため今回は「3」としました。
遊びやすさ:複雑なルールはなく全体的なゲームの進行自体はシンプルで、スムーズにプレイできる作りになっています。ただ、PC環境でもコントローラーのBボタン表記が残っていたり、「はい/いいえ」の配置が直感的でなかったりとUI周りに若干の粗さを感じたため今回は「4」としました。
コストパフォーマンス:価格は早期アクセス価格で1,280円、クリアまでは約7時間でした。プレイ時間に対する満足度としては十分に良心的だと感じましたが、他作品との評価基準を考慮し、今回は「4」としました。
おすすめ度:早期アクセスのためチャプター4までのプレイとなりますが、真相へ向けて謎が徐々に解き明かされていく構成は現状でもかなり魅力的です。このクオリティであれば完結時にも素晴らしい体験を届けてくれるという期待を込めて「5」としました。
⚠️ここから先は『さとり中二病相談室 -第二現実の翻訳者-』の攻略やエンディング・真相に関する重大なネタバレが含まれます!未プレイの方は絶対にブラウザバックしてください!⚠️
【ネタバレ有】
プロローグ:堕天 天野 乙流(アマノ オツル)
チュートリアルを兼ねたプロローグに登場する来訪者。自らを「堕天使の転生者」と名乗る中学2年生の少年です。小学校時代は何事でも1番を取れていたものの、中学に上がって「上には上がいる」という現実に直面。唯一無二の存在であり続けるために「堕天使という異端者」を演じ、無理に自分を特別視しようとしていました。

コゴロウとの対話を通じて、無理に頂点を目指して飛び続ける必要はなく、翼を捨てて身軽に生きる「天使の異端」としての生き方を提示され、等身大の自分を受け入れる道を見出す姿が印象的でした。

チャプター1:侵食 根黒 徹(ネグロ トオル)
自らを「漆黒の瘴気に蝕まれ、呪いによって徐々に体が溶けてしまう」と訴える少年。彼の視界を覆っていた瘴気と呪いの正体は、「大人になること」への強い恐怖でした。
受験生になり、周囲の友人がアクセサリーやカラコンをやめて真面目に勉強を始め、将来や現実を見据えだしたことで強い焦りと孤立感を覚えるように。「大人になる=自由や個性を失い、退屈な日常を繰り返すこと」と思い込み、現実の進路から目を背けるために、自ら「呪い」という名の防壁を張り巡らせていたことが対話と読心によって明かされます。

コゴロウは「呪いをかけたのが君なら、君自身で呪いを解くこともできる」と寄り添い、「僕も高校の頃に考えていた進路とは全く違う道を歩んでいる」「選ばなかった道が腐り落ちることはない」と語りかけます。それに対しトオルが「中二病専門相談室の室長なんざ、進路として考えもしねえわ」と吹き出し、「瘴気の先」へ踏み出す覚悟を決める笑顔がとても爽快で、胸を打つエピソードでした。

チャプター2:叛逆 天野 和奏(アマノ ワカナ)
プロローグに登場した天野乙流の実の姉で、校内を荒らし回る問題行動を起こしている高校2年生の少女。「破壊作戦」と称してルールを破り教師たちを困らせるなど、一見するとただの派手な不良少女に見えますが、その裏には「完璧な優等生」としての重圧に押し潰された過去がありました。

今まで人一倍の努力を重ねて優等生であり続けたものの、周囲からはそれが「当たり前」とされ褒められなくなってしまったこと。一方で、少しの努力で褒められ自由に楽しんでいる不良たちの姿を羨ましく感じていたことが明かされます。「いい子」を否定するために不良を演じて自由を求めたはずが、いつの間にか「いい子の逆を演じ続けなければならない」という新たな不自由に縛られていました。

さらに、彼女が心の中で最も手放せなかったのは「乙流のお姉ちゃん」という変えられない事実でした。コゴロウから「今まで積み重ねてきた信頼や実力は必ず味方になる。そんな時のために『いい子』を続けるのもいいかもしれない」と言葉をかけられたことで、彼女は肩の荷を下ろし「これからは潜伏作戦。十分信頼を取り戻せたら、少しワガママになってみようかな」と前を向きます。「いい子」であることの価値を再定義し、等身大の姉として折り合いをつける決着が非常に爽やかなエピソードでした。

チャプター3:呪縛 禍身 深紡(マガツ ミツ)
「ボクの声は呪われている。喋ると周りの人が壊れる」とスケッチブックに書き、一切の声を出せなくなってしまった中学生・禍身深紡(みつ)。これまでの来訪者とは異なり、我が子の異変を強く案じる母・禍身静子(シズコ)と共に2人から話を聞いていく形で物語が進みます。

当初は母・静子から「息子」として紹介されるため男の子だと思って進めていくことになりますが、明かされた真実は、母親によって「かわいいもの」を徹底的に抑圧されてきた女の子でした。父親の浮気が原因で女性を信じられなくなり、「女は裏切るもの」という歪んだ恐怖を抱いた静子によって、ミツは無理やり男の子として育てられていたのです。
本当は可愛いものが大好きで「可愛くなりたい」「女の子として見てほしい」という切実な願いを抱えていたミツ。しかし一度その思いを伝えた際に母親が豹変したことで、「自分の声=母親を壊す滅びの引き金」と信じ込み、大好きな母に愛され続けるために自分の望みも声も封じ込めてしまっていました。

コゴロウによる翻訳を経て、張り詰めていた心の糸が解けたミツは、「ずっと……ずっと、かわいくなりたかった。女の子として……見てほしかった」と涙ながらに本当の叫びをぶつけます。それを受け止めた静子も「あなたは、あなたのままでいい……。今度こそ、ちゃんと向き合うわ」と自らの過ちを受け入れ、完全な和解には時間がかかるとしても、呪いに縛られていた2人の間に確かな「余白」が生まれる結末はシリーズ屈指の切なさと温かさがありました。

チャプター4:回帰 月音 宵一(ツキネ ヨイチ)& 砂取 ナナミ(サトリ ナナミ)
自らを「狐に憑かれた」と訴える28歳の青年・月音宵一。少年のような幼い見た目ですが、大きなお抱え占い師を抱える名家・月音家の長男です。当初は自身の狐憑きを解決するために相談室を訪れますが、主人公コゴロウの兄・砂取醒二(セイジ)によって、重篤な状態にある妹・砂取ナナミが連れてこられたことで事態は急変します。

ヨイチは「家族」「兄弟」という言葉に自身の第二現実を解く鍵を感じ、ナナミのカウンセリングに同席することに。しかし高校生のはずのナナミがあり得ない「医者としての日常」を語るなど重度の逃避を見せ、彼女の認知を正そうとする過程で、相談室では前代未聞の「時間の巻き戻り」が発生します。ナナミの「嘘で偽る」第二現実と「読心」の相互作用による共鳴が現実を数日単位で塗り替えていたのです。

ナナミが抱えていた現実の悩みは、厳格な父親から課された「砂取家の人間として尊敬される医者になれ」という過酷な義務と重圧でした。しかし彼女の本当の願いは、優秀な医者になること以上に「家族で喧嘩して離れ離れになりたくなかった」という純粋な家族の絆でした。本音を吐露し涙を流したナナミは、「嘘や見栄の曇りを取っ払い、本当の自分を見つける」と前を向くことができました。

その家族の絆を間近で目撃したヨイチもまた、自らの真実に辿り着きます。かつて「家の恥」となり嫡子の座を弟に譲ることが弟のためだと信じ込んでいたヨイチでしたが、自身を縛っていた「狐」の正体は、嘘や偽りではなく「弟たちと昔のように仲良くしたかった」という心からの本音だったと気付き、コゴロウの手を借りず自力で現実を取り戻しました。家族という共通項を持つ2つの物語が美しく交錯する、非常にドラマチックな章でした。

前作『おやおや?大家さん!』とのつながり
本作は、前作『おやおや?大家さん!』と同じ世界観で描かれており、前作のキャラクターが登場します。
チャプター2から登場し、チャプター3にも顔を出す「こだまちゃん」は、前作ファンには嬉しい存在です。

また、チャプター4の月音宵一は、前作に登場した月音伝八の家と関係するキャラクターです。
前作を未プレイでも本作は楽しめますが、前作を知っているとニヤリとする場面があります。
前作ネタバレ有
前作をプレイしていると、妖怪騒動で疑心暗鬼になっていたこだまちゃんが「お人好しだけど優しい大家さんや、住人さんがたくさんいる。」と語る場面に、とても嬉しくなってしまいます。

また、コゴロウの過去回想に登場する天馬が「隻眼の妖怪」と名乗り続けている点から、前作に登場した一目驚大と同一人物なのでは?と思わせます


月音伝八の名前と、月音家の名前も登場します

前作では、こだまちゃん以外の住人(伝八や一目驚大など)は行方不明のままだったので、本作で詳細が分かればいいなと期待してしまいました。
まとめ 言葉の裏を読み解く面白さと、主人公の優しさに惹かれる一作
『さとり中二病相談室 -第二現実の翻訳者-』は、奇抜な言葉の裏にある「本音」を読み解いていく、優しさに満ちた共感型ミステリーでした。
「中二病」を病として扱う設定が秀逸で、現時点のチャプター4までの来訪者は、いずれも「本当の自分を受け入れてほしい」「家族や周囲と向き合いたい」という切実な想いを抱えていました。それを一切否定せず、自然と本音を引き出していくコゴロウの寄り添い方は、まさに対話のお手本のようです。
推理の手応えという点では、回答キーワードの抽象度が高く迷う場面もあります。そのため、ロジックを突き詰める作品というよりは、キャラクターの心の動きと物語を味わう作品として楽しむのがおすすめです。UI面にも少し粗さが残るため、今後の改善にも期待したいところです。
早期アクセスのため、現状はチャプター4までのプレイとなりますが、このクオリティが続くなら、完結時にも素晴らしい体験が待っているはずです。製品版のリリースを楽しみに待ちたいと思います。

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ちなみに、まとめ記事の中でも直近で個人的に一番ヒットだったのが『魔法少女ノ魔女裁判』です!
Steamで「圧倒的に好評」を獲得した超濃厚なデスゲーム×ミステリーなので、絶望的な展開や考察が好きな方はぜひチェックしてみてください。
